小口研治 田村まゆみの気まぐれ山日記    2014年10月19日〜20日  ガイドの休日鳳凰三山

 夜叉神登山口   ツアーガイドも北アルプスの紅葉が里山を彩るようになると

  シーズンの終わりを迎えます。我が家から遠望する3000mの

  稜線が白く雪をまとえばスノーシーズンに思いを馳せる時期と

  なるのです。

  山のシーズン中に溜まったステンドグラス制作の依頼を気にしつつ

  夏の時期には叶わなかったプライベート山行のチャンスを窺いながら

  の日々…。と!翌日から好天の予報しかもパートナーも時間が

  取れそうとの事。2〜3の候補から鳳凰三山と決定、通常の装備に

  テント、シュラフ、火器と食糧を加えれば準備OK。

  高速を飛ばして夜叉神登山口へ。
 マムシグサの造形美   夜叉神登山口からは長大な尾根歩きとなり6時間余りは

  眺望の期待できない暗い針葉樹林帯の登りとなります。

  時々は明るい紅葉樹林を通り過ぎる時など思わず大きく

  息を吸いたくなる気分です、また、この時期でしか出会えない

  色彩と造形美の発見も楽しみの一つです。

  実が落ちた後のマムシグサ、このようなガラスのオブジェ

  が出来たら楽しいのですが。
 テンカラ   「テンカラ」の巨木。

  この尾根で多く目にした天然の唐松、樹齢数百年と思われる

  老木で樹形から見た通り用材にならず残されたのでしょう、

  生命力の凄さを見るようです。
 不思議な標語   単調な針葉樹林帯の登り、面白いものは大歓迎、

  良く意味の分からない標語のパネル、どこかで見た

  ような気がします、島々谷を徳本峠に登る途中で

  確か見たような…。
 薬師岳山頂
  鳳凰山とは、薬師岳、観音岳、地蔵岳の総称で、鳳凰三山と呼ばれることが多い。うんざりするほどの長〜い単調な樹林帯の登りは

やがて花崗岩が目に付き始めると森林限界が近くなり砂払岳着、ご褒美の大パノラマの始まりです。薬師岳小屋休憩して山頂へ。
 薬師岳山頂着
 薬師岳山頂からのパノラマを堪能、観音岳へ続く白い花崗岩の砂の稜線歩きは快適そのものです。
 観音岳へ
 観音岳山頂   観音岳山頂。
 観音岳から地蔵岳を望む   見えました、地蔵岳のオベリスクです。

  金峰山頂の五丈岩と並びどの山から見てもそれと

  すぐにわかる目印です。
初雪   日陰には雪が、北岳、間の岳、農鳥岳も薄っすらと白く

  特に塩見岳は積もったと言った感じに見えました。

  これからの山行は雪に追われるように、天候を見極めて

  行動する必要がありますが、好天なら陽射しも温かくて

  何より静かな山を愉しむならこの時期は逃せません。
鳳凰小屋へ   観音岳を降り鳳凰小屋への近道の分岐。

  せっかく登った稜線、足場の悪い登山道で

  「まだ降るんかい!」の30〜40分、テン場は

  樹林帯で風も無く快適であったのが救いでしたが

  ペグ替わりの石の持ち込み禁止とか、ペグなんか

  夏も冬も持ったことないのでやれやれです。
朝食の味噌煮込みうどん    10月20日朝

  気温も予想外に暖かく熟睡、やや雲が多いのが気になる程度、

  味噌煮込みうどんに天ぷらとたっぷり葱をトッピングして腹ごしらえ

  9張余りあったテントも早出組が多く我ら最終の出発となりました。
 地蔵岳への登り   鳳凰小屋から順調に高度を上げて稜線近く、オベリスクが

  見えてくると砂場のような登山道になりますが小刻みに

  登れば苦になりません。
  地蔵岳山頂とオベリスクです。オベリスクとは古代エジプトで神殿に立てられた記念碑(モニュメント)の一種で

上方に向かって狭まった高く長い直立した石の柱を言い、主に四角柱で先端がピラミット型をしています、

眼前の岩塔もまさにオベリスクと言うにふさわしい姿で迫ってくるようです。岩塔は基部から26m余り。

この地蔵岳オべりスクに初めて登った人は、1906年(明治39年)日本アルプスを世界に紹介したウォルター ウエストンです。
 地蔵岳賽の河原
 オベリスクには登れるのでしょうか?色々な情報では上級者の領域のようです、一応様子を見るとそれなりのクラックに怪しいお助けロープが垂れ下がっていました。
 オベリスクの岩場               オベリスク登り
 クラックにカムで支点   通常のガイド装備で登れるのか?岩稜帯通過に携行するカムが

  役に立ちそうです、とてもあてにならないお助けロープもバック

  アップには使えます。ウエブなどでこの古くて怪しいロープに体重を

  かけて登っている写真を見ますが大変危険です。

 オベリスク登る   何とも手がかりの無いのっぺりした岩です。
オベリスク登攀   何とかなるか?しっかりした支点がありホッ!
 オベリスクの頂上です。
 オベリスク頂上
降りは懸垂下降で無事オベリスク登頂終了、ここで時間を費やした分広河原のバスの時間が気になります、何とか最終の一便前に間に合えば良いのですが。
 懸垂下降
広河原に降りる早川尾根分岐に見事なカラマツの老木、厳しい稜線に発芽して長年の風雪に耐えた姿です。

 厳しい環境で成長は遅く、樹木の樹齢は外観では分かりませんが数十年から百年近いのではと推測しました。

   この樹形を見て「盆栽の様だ」といいますが、もともと自然の造形美のものを模して作られたものが盆栽なのです。
 稜線の唐松
稜線の唐松と   なッ?カラマツのようにガンバレ〜。
 苔と地衣類    あらッ! ごませんべい?

  岩に張り付いた苔の間から不思議な模様発見、

  ガラスのデザインのヒントになりそうです。

  これは、樹皮や岩に良く見られる地衣類で苔の

  ように植物ではなく菌類で、樹木の枝に垂れ下がっ

  ているサルオガセも仲間のようです。
 早川尾根の高嶺から見た富士山頂にはレンズ雲がかかっています、好天もここまで、天候の悪化を告げています。
 レンズ雲と富士山
 白鳳峠   赤抜沢ノ頭から西へ早川尾根を降り高嶺を越えると鳳凰三山の

  白い花崗岩から変性岩へと変わり白鳳峠へ、オベリスクの登りで

  一時間費やし、14時のバスに乗るべく思いっきり飛ばして下山、

  雨もぱらぱら降りだした中、ひいひい言いながら最後の急な登山道

  を駆け降り林道に着いた時は正直ホッとしました、バス発車30分

  前着、こんなに早く歩いたのは久しぶりのことです。

  鳳凰三山、名前が示す通り古くからの山岳信仰の山であるのは

  言うまでもありませんが、コンパクトにまとまっていて明るい稜線

  歩きは快適そのもの、最近人気の山のようです、特に若者の姿が

  多かったのが印象に残りました。

 小口研治 田村まゆみの気まぐれ山日記    2014年10月11日〜13日 涸沢ガイド

 明神池の御舟   10月11日スーパー台風の接近が報じられる中、

  多くのキャンセルが出ましたがツアーは催行となり

  ました。上高地で合流の後、梓川右岸を明神まで散策、

  明神池では神事に用いられる御舟が浮かんで いました。

  船首には龍の頭と鷁(ゲキ)の首とを彫刻した二隻一対の

  船。鷁とはサギに似た中国の想像上の白い大型の水鳥

  で、風に抗って逞しく飛ぶ。そのため龍と並んであらゆる

  艱難辛苦を乗り越えて旅よ成し遂げるイメージから、船の

  守り神とされています。(龍頭鷁首、りゅうとうげきしゅ)
 明神館   お世話になった朝焼けの宿「明神館」

  正面の山は明神岳五峰〜一峰です。
 なぜか上高地では見かけないブナ、本谷橋近くなると見事な大木を見る事が出来ます。今、黄葉の真っ盛りです。
 本谷のブナ
 大天井岳とナナカマド   涸沢の谷に入り、振り返れば東大天井岳と

  葉の落ちたナナカマドの実が鮮やかです。

 
 涸沢紅葉   皆様、最後の秋の彩を記憶とカメラに納めます。
 屏風の頭上空に現れたクロスしたジェット機の雲。
 ジェット雲
 涸沢テン場   10月、連休の涸沢とは思えないテントの数、

  スーパー台風の予報で小屋ではなんと300の

  キャンセル!とか。

  お客様には布団一枚にゆっくりと寝て頂けました。
最終日、さすが天気は降り坂、明神岳が幻想的に浮かびあがっていました、これも山の見せる魅力的な風景です。 皆様お疲れ様でした。
 明神岳
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